【愛猫長生き術】必要な栄養素を知り、猫の健康を守ろう

愛猫の健康寿命を延ばしたい！栄養素の重要性と年齢に合わせた食事選び

愛猫の健康寿命を延ばしたい、とお悩みですか？猫は年齢によって必要な栄養素が異なるため、適切な食事選びが重要です。

このページでは、猫にとって重要な栄養素と、年齢に合わせた食事選びのポイントを解説します。

猫は完全な肉食動物であり、犬とは異なる消化器官や栄養要求量を持っています。 タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルなど、猫にとって必要な栄養素をバランス良く摂取することが大切です。子猫期には成長に必要なタンパク質やビタミン、成猫期には体重維持に役立つ栄養素、シニア期には関節の健康をサポートする成分など、猫の年齢に合わせた栄養素を摂取することで、健康的な生活を送ることができます。

この記事を読むことで、愛猫に合った食事を選び、健康寿命を延ばすためのヒントを得ることができます。

愛猫の健康を守りたい、いつまでも元気で長生きしてほしい、というあなたに、ぜひご一読ください。

１．猫にとって重要な栄養素とは

1. 栄養素の重要性

猫の健康を維持するためには、適切な栄養摂取が必要です。猫は肉食動物であり、特定の栄養素が健康維持に不可欠です。AAFCO（全米飼料検査官協会）やFEDIAF（欧州ペットフード工業会連合）などの団体が提唱する栄養基準に沿った食事が望ましく、総合栄養食には猫が生きる為に必要な栄養素が含まれています。

2. 主要な栄養素

５大栄養素	主な働き
タンパク質	筋肉の成長や修復、免疫機能の強化、酵素やホルモンの合成に必要。
脂肪	主なエネルギー源として利用。脳や神経系の機能維持、運動時のエネルギー供給。
炭水化物	エネルギー源として利用されるほか、体温調節や細胞の構築、脂溶性ビタミンの吸収に必要。
ビタミン	免疫機能の維持、細胞の健康維持、代謝反応の促進など、様々な役割を果たす。
ミネラル	骨や歯の形成、体内の機能維持、酵素やホルモンの正常な機能に必要。

１．タンパク質

• 猫は完全な肉食動物：猫は雑食の犬と比べて小腸が短い特徴があります。肉食動物の小腸は、植物食動物に比べて消化が速く、タンパク質や他の栄養素を効率的に吸収するために最適化されています。
• タンパク質は重要な栄養素：タンパク質は猫の健康に不可欠であり、筋肉の成長や修復、免疫機能の強化、酵素やホルモンの合成、そして必要に応じたエネルギー源としての役割を果たします。適切なタンパク質摂取がないと、筋肉の発達や損傷の修復が十分に行われず、猫の免疫機能も低下し、酵素やホルモンの合成も妨げられます。猫が狩りをする肉食動物であるため、獲物から得られるタンパク質は特に重要です。
• 必須アミノ酸：タンパク質は、アミノ酸と呼ばれる分子の鎖で構成されています。アミノ酸は、猫や他の動物が体内でさまざまな生化学的プロセスを行うために必要な栄養素です。中でも、体内で生成することができない「必須アミノ酸」と呼ばれるアミノ酸は、食事から摂取しなければならず、１１種類あります。
• タンパク質ばかりの採りすぎに注意：猫のタンパク質源である肉には、リンが含まれていて、過剰なリン摂取は、腎臓の健康にも影響を及ぼす可能性があります。腎臓は、リンの排泄を調節する重要な役割を果たしていますが、過剰なリン摂取により腎臓に負担がかかり、慢性的な腎臓病のリスクが高まる可能性があります。そのため、猫が、人や犬より多くのタンパク質が必要だからといって、タンパク質ばかりを与えすぎるのは注意が必要です。

２．脂肪

• エネルギー源：小さな体でも活動的な猫にとって、高カロリーな脂肪はエネルギーの主要な供給源の1つです。猫は肉食動物であり、脂肪からのエネルギーを効率的に利用します。脂肪がエネルギー源として提供されることで、活発な生活や体温維持に必要なエネルギーを得ることができます。また、皮膚の保護や毛づやを良くする働きもあります。
• 必須脂肪酸の供給: 脂肪には脂肪酸があり、体内で合成することが出来る非必須脂肪酸と、体内で合成できない必須脂肪酸があります。猫は自身で必須脂肪酸を合成することができませんので、食事から摂取する必要があります。必須脂肪酸にはオメガ-3脂肪酸とオメガ-6脂肪酸があり、皮膚や被毛の健康維持に不可欠です。これらの脂肪酸は、炎症の調節や免疫機能のサポートにも関与していて、多くのフードで強化されてきています。
• ビタミンの吸収: 脂肪は脂溶性ビタミン（A、D、E、Kなど）の吸収を助けます。これらのビタミンは健康な視力、骨の発育、免疫システムの正常な機能、血液凝固などに重要です。適切な脂肪摂取がないと、これらのビタミンの吸収が阻害される可能性があります。
• 食事の味と栄養バランス: 脂肪は食事の味と食欲を向上させる役割も果たします。また、適切な脂肪バランスは猫の健康を維持するために重要です。過剰または不足した脂肪摂取は、肥満や栄養失調などの健康問題を引き起こす可能性があります。

３．炭水化物

• 糖質の消化が苦手：炭水化物は糖質と食物繊維に分けられます。猫の唾液にはタンパク質を分解する酵素が豊富に含まれていますが、でんぷんを分解する酵素（αアミラーゼ）はほとんど存在しません。猫は肉食動物であり、野生時代には狩猟によって主にタンパク質と脂肪を摂取していました。そのため、猫はタンパク質や脂肪を主要なエネルギー源として利用し、炭水化物を消化する能力は比較的低いとされています。
• グレインフリーのフードは良くないのか？：猫は肉食動物で、糖質の消化も苦手。なので、デンプンを多く含んだ穀物（トウモロコシ・米・小麦など）の入ったグレインフリーのキャットフードは良くないという考えがあります。加水加熱されたデンプンは、通常の生の状態よりも消化されやすく、猫の消化器系に負担をかけることが少ないと考えられます。したがって、加熱処理されたデンプンが含まれる食事を与えることは、猫の健康に対して大きな問題はないと考えられます。
  
  その他、キャットフードに穀物を使用する理由
  • タンパク質や脂質の過剰摂取を防ぐ: 穀物を含まないキャットフードは、タンパク質や脂質の割合が多くなってしまいます。過剰に摂取すると、悪玉コレステロールの増加や腎臓への負担、栄養の不均衡を招く恐れがあります。
  • 食品の形状と質感の維持: 穀物はキャットフードの形状や質感を維持するのに役立ちます。特にドライフードでは、穀物が食品の形を保ち、フードが一緒に粘りついたり、崩れたりしないように、つなぎの役割をします。
  • 栄養素の供給: 穀物には、タンパク質、ビタミンやミネラルなどの栄養素も含まれています。穀物をキャットフードに添加することで、猫に必要な栄養素を補給することができます。
  • 食物繊維の提供: 穀物には食物繊維も含まれており、消化器系の健康をサポートする役割があります。適度な量の食物繊維は便通を改善し、消化器系の問題を予防するのに役立ちます。
    
    このような理由で、キャットフードにも炭水化物は使用されます。ただし、炭水化物の過剰摂取は、肥満や糖尿病、消化不良などの健康問題を引き起こす可能性があるため、バランスが重要です。
    

４．ビタミン

ビタミンを採ることで、タンパク質も脂質も体内で利用することができるようになります。動きが活発な猫は、多くのビタミンを採る必要があるのです。

ビタミンには脂溶性のビタミンと水溶性のビタミンがあります。

脂溶性ビタミンは、脂質と一緒に消化され、体内で脂肪組織に貯蔵される栄養素です。主にビタミンA、D、E、Kがこれに該当します。これらのビタミンは代謝や免疫機能の維持、細胞成長に必要です。体に貯めておくことが出来るので、毎日とらなければならないものではありません。摂りすぎると体内に蓄積し、中毒症のリスクがあります。したがって、適切な摂取量を保つことが重要です。

水溶性ビタミンは、水に溶ける性質を持ち、体内で貯蔵されずに摂取後は比較的速やかに尿として排泄されます。主にビタミンB群とビタミンCがこれに該当し、エネルギー生産、神経機能、免疫機能の維持に重要な役割を果たします。

ビタミン	特徴	溶解性
ビタミンA	視覚に不可欠。免疫システムの強化、皮膚や被毛の健康維持に重要。脂肪組織や 肝臓に貯蔵。過剰摂取で食欲不振や関節炎を起こすことがある。	脂溶性
ビタミンB群	エネルギー生産、神経機能、代謝に関与。水溶性なので体外に排泄されやすい。	水溶性
ビタミンC	免疫機能強化、コラーゲン生成、抗酸化作用。水溶性なので体外に排泄され やすい。人間以外の動物は自力で合成することができる。	水溶性
ビタミンD	カルシウム吸収、骨の健康、免疫機能。脂肪組織や皮膚で合成。適切な摂取量が 必要。人のように紫外線を浴びて皮膚で合成するのが得意ではないので、食事から 摂取しないとならない。	脂溶性
ビタミンE	細胞の健康、抗酸化作用、被毛の健康。脂肪組織に貯蔵。過剰摂取に注意。	脂溶性
ビタミンK	血液凝固、骨の健康、血管の健康。脂肪組織や肝臓に貯蔵。過剰摂取に注意。	脂溶性

５．ミネラル

ミネラルは、エネルギー源にななりませんが、猫の健康に不可欠で、骨や歯の形成、代謝、神経機能、免疫機能など多くの生理学的機能に関与します。猫がバランスの取れた食事を摂取することで、これらのミネラルを適切に摂取できるように注意することが重要です。

1. カルシウム: 骨や歯の形成と維持に不可欠。
2. リン: 骨や歯の形成とエネルギー代謝に関与。
3. マグネシウム: 神経機能や筋肉収縮に必要。
4. カリウム: 細胞の機能と水分バランスの調整。
5. 塩素: 水分バランスの維持と消化液の生成。
6. ナトリウム: 水分バランスの維持と神経伝達に関与。
7. 亜鉛: 代謝、免疫機能、皮膚・被毛の健康維持に必要。
8. 鉄: 赤血球の形成と酸素の運搬。
9. 銅: 赤血球の形成、酵素の活性化、皮膚・被毛の色素形成に必要。
10. マンガン: 骨の形成と酵素反応に不可欠。
11. 肉食動物だからとタンパク質ばかり与えると、カルシウム不足で骨折の原因となります。また、過剰にリンを与えることで、腎臓に負担がかかる原因にもなるので注意が必要です。

３．必須栄養素

必須栄養素とは、人間や動物が健康を維持するために必要な栄養素のことです。体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。これには、必須アミノ酸、必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどが含まれます。これらの栄養素は、成長、発育、代謝、免疫機能など、体の機能を維持するために重要です。

必須栄養素	特徴
必須アミノ酸	タンパク質の構成要素であり、身体の成長や修復、免疫機能の維持などに重要。 アルギニン・ヒスチジン・イソロイシン・ロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン トレオニン・トリプトファン・バリン・タウリンの１１種類。
必須脂肪酸	体内で合成できない脂肪酸。細胞膜の構成要素であり、ホルモン合成、神経機能、炎症調節などに必要。 オメガ-3脂肪酸…α-リノレン酸・EPA（エイコサペンタエン酸）・DHA（ドコサヘキサエン酸） オメガ-6脂肪酸…リノール酸・γ-リノレン酸・アラキドン酸
ビタミン	体内での生理的機能をサポートし、代謝、細胞成長、免疫機能、視力、骨の健康などに関与。水溶性ビタミン（ビタミンC、ビタミンB群）と脂溶性ビタミン（ビタミンA、D、E、K）の両方が含まれ、各ビタミンは異なる役割を果たす。
ミネラル	骨、歯、筋肉、神経などの機能維持に必要。カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素など、体内で微量から必要な量が存在するミネラルが含まれる。水分バランスの調整、酵素活性化、骨形成、血液の酸塩基バランスの維持などに関与。
水	体内で最も重要な成分の一つ。細胞の構成要素であり、体温調節、栄養輸送、代謝産物の排泄、消化などに必要。日々の水分摂取は体内の機能を正常に保つために重要であり、水分不足は脱水症状や体の機能低下を引き起こす可能性がある。猫に必要な１日の水分量は体重1ｋｇあたり50ｍｌ。

２．猫の年齢に応じた栄養の選び方

猫は、年齢によって必要な栄養素が異なります。子猫、成猫、シニア猫それぞれに合った食事を与えることで、健康を維持し、長生きさせることができます。

1.子猫期（生後すぐ～2カ月）

1. 子猫は急速に成長するため、エネルギーとタンパク質が豊富なフードが必要です。
2. 生後すぐから2カ月までは、子猫用ミルクと離乳食から、徐々に子猫用ドライフードと水に切り替えていきます。子猫は自分で必要なだけ食べるので、量は適宜追加してください。
3. 2.子猫期（2カ月～1才前後）
4. 急激な成長を助けるため、高たんぱく＆高カロリーの子猫用フードを与えましょう。タンパク質・カルシウム・ビタミンAなどは成猫よりも多くの量を必要とします。
5. 1才までは基本的には子猫用フードを選び、その後は成猫用に切り替えます。
6. タウリンやビタミン類、ミネラルなどの栄養素も十分に含まれているか確認しましょう。
7. 小分けにされた頻繁な餌やりが必要です。
8. 3.成猫（1～7歳）
   • 成猫は成長段階よりも活動量が落ち着いてきて、安定した体重を維持します。活動量に合わせた栄養を摂取しましょう。
   • タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの栄養素は引き続き必要です。総合栄養食の成猫用フードは、これらの栄養素をバランスよく含んでいます。
   • 避妊・去勢をすると必要なエネルギー量が減るため、肥満予防のため、過剰な脂質やカロリーは避けましょう。
9. 4.シニア猫（7歳以上）
   • シニア猫は代謝が遅くなり、筋肉量が減少する傾向があります。したがって、低カロリー、高タンパク質の食事を与えましょう。運動量が減る一方で食欲は変わらないため、消化がよく体重管理ができる「シニア用」フードが適しています。腎臓や消化機能の低下に配慮した設計にもなっています。
   • 関節の健康をサポートするために、グルコサミンやコンドロイチンなどの関節保護成分が含まれているフードを選ぶのも良いでしょう。
   • フードの消化性や栄養素の吸収性も重視しましょう。歯の衰えを考慮し、柔らかい食感のウェットフードも選択肢の一つです。

AAFCOが提唱する成猫と子猫の栄養量比較表

栄養素	単位	幼猫用基準	成猫用基準	成長段階
タンパク質	%	30.0以上	26.0以上	必須
アルギニン	%	1.24以上	1.04以上	必須
リジン	%	1.20以上	0.83以上	必須
トリプトファン	%	0.25～1.70	0.16～1.70	必須
α-リノレン酸	%	0.02以上	0.50	必須
カルシウム	%	1.0以上	0.6以上
リン	%	0.8以上	0.5以上
銅	mg/kg	15.0以上(ドライ)	5.0以上
ビタミン A	IU/kg	6668～333300	3332～333300

猫の年齢とライフステージに合わせて栄養バランスの取れた食事を提供することで、健康的な生活を支援することができます。

3.まとめ

猫の健康には適切な栄養摂取が不可欠です。肉食動物である猫は、タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂る必要があり、総合栄養食でまかなうことができます。

主な栄養素とその重要性は以下の通りです。

１．タンパク質

• 筋肉形成、免疫機能、酵素・ホルモン合成に必須
• 11種類の必須アミノ酸を食事から摂取する必要あり
• 過剰なリン摂取は腎臓に負担をかける可能性

２．脂肪

• 活動的な猫の主要エネルギー源
• 必須脂肪酸を食事から摂り、皮膚・被毛の健康維持
• 脂溶性ビタミンの吸収を助ける

３．炭水化物

• 猫は糖質の消化が苦手な傾向
• 適度な量の食物繊維は便通改善に役立つ

４．ビタミン・ミネラル

• ビタミン
  • 脂溶性（A、D、E、K）と水溶性（B群、C）の両方が必要。免疫機能や代謝に関与。
• ミネラル
  • 骨や歯の形成、神経機能、免疫機能に不可欠。カルシウム、リン、マグネシウムなどが重要。
  • 過剰・不足に注意が必要

猫の健康を維持するためには、適切な栄養素を摂取することが重要です。必須栄養素には、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどが含まれます。以下は、猫の年齢に応じた栄養の選び方のポイントです。

１．子猫期（生後すぐ～2カ月）

• 急激な成長を助けるため、高たんぱく＆高カロリーの子猫用フードを与えましょう。
• 1才までは子猫用フードを選び、その後は成猫用に切り替えます。

２．成猫（1～7歳）

• 成猫は安定した体重を維持します。活動量に合わせて栄養を摂取しましょう。
• 総合栄養食の成猫用フードは、必要な栄養素をバランスよく含んでいます。

３．シニア猫（7歳以上）

• 低カロリー、高タンパク質の食事を与えましょう。
• 関節の健康をサポートする成分が含まれたフードを選ぶのも良いです。

総括 猫の栄養には以下のポイントがあります。

• タンパク質は筋肉や臓器、皮膚、被毛などの構成成分であり、猫は多くのタンパク質を必要とします。
• 必須アミノ酸（アルギニン、ヒスチジン、イソロイシンなど）は食物から摂取する必要があります。
• 必須脂肪酸（オメガ-3、オメガ-6）は細胞膜の構成要素やホルモン合成に必要です。
• ビタミンとミネラルは健康維持に欠かせません。
• 水は生命維持に最も重要で、猫の1日の水分量は体重1kgあたり50mlです。

獣医師の助言を受けながら、愛猫の健康状態や活動量に合わせたフードを選びましょう。適切な食事プランを作成し、猫の健康をサポートしましょう。